近年、眼科クリニックは単に視力を検査するだけでなく、眼の健康全般に関わる包括的なケアを提供する重要な役割を果たしています。ドライアイや花粉症、視力低下など、患者が来院する要因は身近に発生する症状であることが多いため、眼科クリニックの需要は長く継続しやすいです。
しかし、クリニックの運営において軸となる指針がない場合、クリニックの経営を存続させることは困難になります。医療環境は日々変化しているため、クリニックは患者のニーズや技術の進展に敏感でなければならず、変化に適応するための戦略を策定しなければなりません。
経営戦略を打ち出すことで、限られたリソースを的確に配分し、環境の変化が激しい現代の眼科業界においても、素早く対応することが可能になります。そこで本記事では、 眼科クリニックにおける経営戦略の具体的な作り方、意識する点について詳しく解説します。
>>眼科クリニックの経営戦略|策定の手順から意識するポイントまで詳しく解説!
経営戦略が重要である理由
眼科クリニックにおける環境の変化が激しい昨今、多くのクリニックがその対応に追われています。効果的な対応策の策定には、経営戦略を用いることが有効です。ここでは、経営戦略が眼科クリニックの経営において重要である理由を、詳しく解説します。
明確な行動指針
経営戦略を策定する際には、クリニックの行動指針である経営理念(存在意義や目的)とビジョン(将来の理想像)を明確に定義します。この二つの行動指針はいかなる環境においてもぶれません。そのため、クリニックが難しい決断を迫られた際に、適切な判断を選択することができます。
また、従業員やステークホルダーなどに、クリニックについてより理解してもらうためにも、明確な行動指針は有用です。患者からの信用を得るだけでなく、従業員のモチベーションを高めることができ、クリニックの成功につなげられます。
競争優位性の獲得
経営戦略では、さまざまな戦略オプションを通じて競争優位性を確立するための道筋を示します。
クリニックを存続させていく上で、競争優位性は欠かせません。競争優位は、クリニックによって、診療技術の高さや診療費の安さなど、さまざまです。経営戦略を策定する中で、クリニックの隠れた優位性を見つけ出すことができます。具体的な戦略を策定することにより、利用者に対する魅力を高め、他のクリニックに負けない眼科クリニックを展開することが可能です。
経営資源の効率的な配分
経営戦略を策定することで、保有資源の現状やクリニックの強みや弱みを明確に把握できるため、経営資源を適切に配分することが可能になります。経営資源の効率的な配分は、クリニックの経営において、コスト削減や競争力の強化、長期的な持続可能性の向上に効果的です。また、近年は社会全体におけるデジタル化が進んでおり、クリニックはデジタル技術に要する資源を確保することが求められています。
経営戦略を練ることで、経営資源を効率的に配分でき、眼科クリニック業界のデジタル化に対応することが可能です。
眼科クリニックにおける経営戦略の策定手順
ここでは、眼科クリニックにおける経営戦略の策定方法を詳しく解説します。
1.企業理念やビジョンを明らかにする
まずは、クリニックの経営理念とビジョンを具体化します。
企業理念は、クリニックの存在意義や使命を普遍的な形で表したものです。経営者は「自身のクリニックは何のために存在し、どういう目的で、どのような仕組みで経営を行うのか」についてステークホルダーに示し、従業員に対して行動や判断の指針を与える必要があります。
一般的に経営理念は、経営者の意志やクリニックの将来の理想像など、長期的な視点で考えます。シンプルで分かりやすく、社員やステークホルダーから共感を得られる内容を意識することが、企業理念を考える上でのポイントです。
ビジョンは、 事業を通じてクリニックが将来的に成し遂げたいことや成し遂げたい状態を指したものです。つまり、クリニックが目指す中期的なゴールイメージを、投資家やスタッフ、社会全体に向けて示したものになります。 一般的には、時間軸を入れて策定し、時代に合わせて変えていきます。現実的に実現度合いの高い目標を掲げることが、ビジョンを決める上での重要なポイントです。
2.外部環境を分析
次に、現実を正確に把握するために環境分析を行います。
外部環境分析は、クリニックが直接コントロールしにくい外部環境のトレンドや変化の兆しを明らかにする財務分析です。市場のニーズや競争環境を把握することで、市場におけるチャンスや不安要素の発見につながります。
外部環境分析のポイントは、事象を一面的にとらえないことです。眼科業界を例にすると、日本の人口が減少し患者の絶対数が減っている一方、ディスプレイ端末の使用頻度の増加によりドライアイや視力低下などの患者数が増えているなどが挙げられます。
以下が眼科クリニックにおける代表的な外部環境分析のフレームワークです。
- PEST分析:Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)という4つの外部環境が分析対象です。技術革新や法改正など、クリニックを取り巻く大きな環境要因を把握できます。
- ファイブフォース分析:業界内での競争、業界への新規参入者、代替品の存在、患者の交渉力、サプライヤーの交渉力という5つの脅威を分析にも用います。いずれも収益に直結する要素であることが共通項です。
3.内部環境を分析
外部環境の次は、クリニックの内部環境を分析します。
内部環境分析は、クリニックでコントロールできる経営資源が分析の対象です。経営資源や自社の構造上の強みや弱みを把握することにより、クリニックにとってのビジネスチャンスを見つけられます。
内部環境分析では、スタッフからのフィードバックの収集が不可欠です。業務を通じて得た具体的な洞察を得ることができ、組織の内部環境のより深い理解につなげられます。
以下が眼科クリニックにおける代表的な内部環境分析のフレームワークです。
- 3C分析:Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)、という3つの「C」について分析します。上記の順に分析することが意識すべきポイントです。
- SWOT分析:Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素が分析の際の要素です。クリニックの改善点や伸ばすべきポイント、将来的なリスクなどを見つけることができるフレームワークです。
4.戦略オプションの立案と戦略の決定
環境分析が完了すると、戦略オプションの立案と戦略の決定に移行します。
戦略オプションには市場進出の方法、クリニックのポジショニング、患者ターゲティングなどが含まれます。なお、戦略はクリニックの経営理念とビジョンにマッチしたものであることが重要です。
以下が眼科クリニックにおける代表的な経営戦略のフレームワークです。
- 多角化戦略
多角化戦略は、クリニックが保有している技術やノウハウを活かしながら新たな事業領域に進出する戦略です。既存事業と異なる市場に参入することで、収益の多角化やリスクの分散を図ることができます。 - 差別化戦略
差別化戦略は、競合クリニックとの差異化を図り、独自の付加価値を提供することで市場での競争優位性を確立する戦略です。差別化要因には、提供する診療や品質、ターゲット、アフターサービスなどが挙げられます。他のクリニックには真似できない独自性を作ることが差別化戦略においてなによりも重要です。 - ニッチ戦略
ニッチ戦略は、限られた市場セグメントや特定の患者層に焦点を絞り、そのニーズに特化した診療やサービスを提供する戦略です。大手クリニックが手を出しづらい小さな市場をターゲットとするため、競争を避けながら市場シェアを独占できる可能性を秘めています。
5.戦略オプションのレビュー
設定した期間終了後に、期待した効果が上がったか確認します。うまくいかなかった場合は、その原因を究明し、必要に応じて修正案を考えます。場合によっては経営理念やビジョンに立ち戻ることや、環境分析から再スタートすることも必要です。
以上のサイクルを繰り返すことで、クリニックの経営を成功に導けます。
経営戦略において欠かせないキーワード
ここでは、経営戦略を考える上で欠かせないキーワードを紹介します。
コア・コンピタンス
コア・コンピタンスとは、他のクリニックに真似できない核となる能力のことで、競争優位の源泉となります。眼科クリニックにおけるコア・コンピタンスは、具体的に以下の3つの要素を含みます。
- 患者に利益をもたらす能力
- 競争クリニックに模倣されにくい能力
- 複数の市場に推進できる能力
イノベーション
イノベーションとは、革新あるいは技術革新を意味します。クリニックの活動において、従来と異なる非連続的な発想や技術の導入によって、それまでになかった問題解決の手法を生みだすことを指します。
眼科クリニックにおけるイノベーションの代表的なタイプは以下の通りです。
- 破壊的イノベーション:新たな技術革新より生み出された診療法やサービスが、新たな市場の開拓を可能とすること
- 持続的イノベーション:クリニックの高い技術力により診療やサービスに高付加価値を付けることで、既存市場で求められている価値を向上させること
- オープン・イノベーション:自社の技術だけでなく、業種や分野を超えた他社の知識や技術を集約させ、新たな診療方法やサービスの提供を行なうこと
DX(デジタルフォーメーション)
DX(デジタルフォーメーション)とは、企業がビジネス環境の激しい変化に対応するために、デジタル技術を活用し、自社の競争力を高めることを指します。
DXは、これまで人が行っていた作業をコンピュータに任せ、コスト削減や業務効率化を図るだけではありません。人の手では難しく、現実的に難しかったことも、AIなどのデジタル技術を活用により、実現することができます。
クリニックでは予約受付から患者管理、診療やマーケティングまで、あらゆる場面においてDXによる改善が見込めます。そのため、DXはクリニックの経営戦略を策定する上で、考慮しておくべき重要なポイントです。
眼科クリニックの予約システムとは
眼科クリニックのDXにおいて、予約システムの導入が特に有用です。クリニックにおける業務の効率化はもちろん、集患に役立つ機能を数多く搭載しています。ここでは、予約システムの導入メリットと、眼科クリニックに役立つ予約システムの機能について解説します。
眼科クリニックにおける予約システムのメリット
予約システムを導入することで、眼科クリニックの無人受付において大きな手助けとなります。以下は、そのなかでも特に効果的なメリットです。
・業務効率化
予約システムは予約受付や患者情報を自動で管理します。人の手により紙やExcelで管理する必要がありません。書き間違いや聞き間違いなどの人為的ミスも発生しなくなり、正確で効率的な眼科クリニックの運営が実現します。
・費用削減
予約システムの自動管理機能は、費用の削減にも効果的です。予約や患者の情報はデータ化されるので、大量の紙や管理するスタッフに費やしていた経費は低減されます。
・マーケティングの強化
予約システムを通じて集められる患者データを分析し、ターゲット市場の動向や患者需要を把握することができます。このデータを基に、効果的なマーケティング戦略を立案可能です。
・患者体験の向上
予約の確認や変更をオンラインでかんたんに行えることで、患者の利便性が向上します。また、待ち時間の短縮やスムーズな受付が実現し、患者満足度も高められます。
眼科クリニックに役立つ予約システムの機能
予約システムはさまざまな種類が存在しています。それぞれ特徴が異なるため、自身の眼科クリニックに合った予約システムを判別することが必要です。以下では眼科クリニックに役立つ予約システムの機能をまとめました。
オンラインカード決済機能
オンラインカード決済機能とは、オンライン予約時にクレジットカードで決済できる機能のことです。 オンラインカード決済機能を活用することで、患者は事前に支払いを完了できるため、予約当日は診療を受けるのみとなります。クリニック側も会計が不要になるため、スタッフが要する業務の負担が軽減されます 。
予約時アンケート機能
予約時アンケート機能は、予約の際に患者からアンケートを募集できる機能です。事前に要望を入力してもらうことで、診療の質を向上させられます。当日のカウンセリングにかかる時間を短縮することもできるため、スタッフの業務量を減らすことも可能です。クリニックが求める質問を作成するためには、選択式か自由記述など、豊富な回答方法を搭載した予約システムを選ぶことが求められます。
キャンセル待ち機能
キャンセル待ち機能は、予約が埋まっている予約枠にキャンセルが生じた際、キャンセル待ちをしている予約者に対して通知を自動で送る機能です。クリニックが求められるキャンセル待ちに関する対応の手間を省けます。また、キャンセル待ちの予約者に迅速に案内できるため、患者獲得の機会を逃しません。
準備時間の設定機能
準備時間設定の機能は、予約と予約の間に隙間時間を確実に確保できる機能です。例えば、10時からの予約を受け付けた際、準備時間を30分に設定していると、自動的に10時30分の予約の受付を終了します。この機能により、メニューの間に準備に要せる時間が確保できるため、医師は余裕をもって診療できます。
診療時間が伸びてしまいがちなクリニックでは、準備時間設定機能がとても効果的です。
メルマガ配信機能
メルマガ配信機能は、予約や来院時にメールアドレスを登録してくれた患者に向けて、お店の最新情報やお得な情報など、患者に役立つ情報を発信する機能です。予約システムのメルマガ配信機能を活用することで、手軽にメルマガ配信を行えます。有益な情報を発信することで、患者の来院意欲を増幅させ、再来院を促すことが可能です。
LINE連携機能
LINE連携機能とは、LINE公式アカウントと予約システムを連携させる機能です。連携することで、LINE公式アカウントを友だち登録している患者が、自身のLINEアカウントを使っての予約や配信コンテンツの受け取れます。患者がLINEアカウントで予約をする際における、連絡先の入力作業を一部省略できることも利便性の向上に効果的です。
LINE連携機能は、メルマガ配信と同等以上に、患者の再来院率の向上が見込めます。
まとめ
今回は、眼科クリニックにおける経営戦略ついて解説しました。
眼科クリニックを経営する際には、経営戦略の策定が不可欠です。5つの手順をサイクル化することで、眼科クリニックの経営を成功に導くことができます。また、経営戦略を考える際には、コア・コンピタンスやイノベーション、DXの3つのキーワードを意識することが大切です。特にDXでは、予約システムの導入が有用で、眼科クリニックの運営において大いに役立ちます。
眼科クリニックの運営で悩んでいる人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
>>眼科クリニック成功のカギ。今から開業したい人が知っておくべきポイント【前編】
>>眼科クリニック成功のカギ。今から開業したい人が知っておくべきポイント【後編】
眼科クリニックの経営には、予約システム「RESERVA」がおすすめ!
画像引用元:RESERVA公式ホームページ
眼科クリニックの経営におすすめの機能が豊富な予約システムRESERVAを紹介します。「RESERVA(レゼルバ)」は導入数26万社を超え、国内シェアトップクラスの実績を誇るクラウド型予約管理システムです。RESERVAは、業界・業種問わず350種類以上の業態で利用されています。
パソコン・スマホ・タブレットに対応しており、最短3分で予約システムを作成できます。管理画面もシンプルでわかりやすいため、初めての予約システムに最適です。予約受付・患者管理をはじめとする多くの機能が無料から利用可能で、開業直後の忙しい時期でも使うことができます。
RESERVAに搭載された豊富な機能は、業務効率の改善や費用の削減だけでなく、眼科クリニックの集患にも大いに役立ちます。ぜひ利用を検討してみてください。